first impression



そのに





「あ〜優くん!待ってたで〜今日もかわいいなぁ!」
何のあいさつもなしに、優に笑いかける関西弁バリバリのオトコに、おれはジロリと不躾な視線を送った。
スラリとした長身に、すっきりした顔立ち。どこぞの育ちのいいおぼっちゃま風のさわやか好青年って風貌だ。三上先輩もかなりイイオトコだけれど、まるでタイプが違う。見てくれからは想像できない関西弁が、このオトコの二面性を表しているようで気に食わなかった。
そう、おれのキライなタイプの人間なのだ。
優等生ぽく振舞いながらも、腹の底では何を考えているのかわからない。そんなヤツ!
その視線に気づいたか、一瞬ドギツイ目で睨み返されたけれど、それはすぐに笑顔に変わった。
「あれ?優くんの友達?何や優くんと全然タイプが違うやんっ!友達言うからカワイイ系かと思って期待してたのに〜」
なんて失礼なヤツなんだ!それはこっちのセリフだってんだ!
おれの表情が変わったのを見てとったのか、優が間に入る。
「崎山さん、ぼくの親友の栗原友樹です。ほらっ、友樹っ!」
おれは仕方なく名を名乗り、頭を下げた。
まったくもって自分の意志ではない。あくまでも優の面子を保つためだ。

「おれは崎山。一応今回の幹事やし、よろしく友樹!」
名前を聞く前からわかっていた、こいつが崎山だってことくらい。しかもすでに・・・呼び捨てかよ?
「友樹、崎山は悪いヤツじゃないんだ。あの通り関西弁だから口汚く聞こえるだけでさ」
先輩のフォローにもムカついた。
それでいいのか先輩?
先輩がそんな気持ちなら、おれにも・・・考えがある。

そう考えると、このバーベキューの楽しくなりそうな・・・そんな気がした。










きっとくじに細工されていたに違いない。
優はあの崎山の車の、しかも助手席に乗せられ、おれは先輩と一緒にもう一方の車に乗せられた。

人見知りがかなり激しい優が心配だったけれど、途中買出しに寄ったスーパーで様子を覗うと、とても楽しそうだし、何よりも、崎山のことを褒めていた。面白いだのなんなのと。
すっかり崎山と打ち解けたらしい優を、切なそうに追う先輩の視線に、おれはため息をついた。
まったくもって世話の焼ける人たちだ!
先輩が優に特別の感情を抱いているのは一目瞭然。
それなら強引にでもあの胸糞悪い崎山から奪っちゃえばいいんだよ!
「優っ、こっちで飯ごうの準備しようぜ?」
「あかんあかん!優くんはおれと釣りすることになってるねん!ほら行こ。ここは結構釣れるからな」
「友樹、ごめんね?さっき約束しちゃったんだ、釣り教えてもらうって」
「そっか・・・いいよ。頑張って釣り上げてきて?」
張り切って頭上に掲げた飯ごう二つを下ろすと、勝ち誇ったような崎山の視線が突き刺さった。
しかし、やはりそれは一瞬のことで・・・次の瞬間にはほんとうに申しわけなさそうな顔をする。
「悪いな〜じゃあ優くん借りていくわ」
ぜってーこいつは二重人格だ!優ってば気づけよ、こいつの本性に!
黙っていられないと先輩を探すと、大きな岩に腰かけて、きゃっきゃと釣りを楽しむ二人を見ているのを見つけた。
自然と大きなため息が出る。
「先輩っ、いいんですか〜優取られちゃいますよ〜」
声をかけると、先輩は戸惑いの表情を浮かべながらも苦し紛れの笑顔を向ける。
「取られるも何もないだろ?麻野が楽しいならいいじゃんか」
何だかな〜この人はっ!
優への気持ちなんてもうバレバレなのに、いつものクールさを崩すまいと平然と言ってのける先輩が可笑しくて、おれはついニヤリと笑ってしまった。
「そうですか〜?ならいいんですけどね!」
もちろんあんないけ好かない崎山なんかよりも、断然先輩の味方には違いないけれど、今までライバルらしい存在がなかった先輩にはちょうどいい刺激かもしれない。
どうせ優の想いは先輩にあるんだから、あの崎山がフラれるのは目に見えている。
のシーンを思い浮かべると、クククと笑いが漏れるのを押さえることが出来なくて、一緒に野菜を切っていた女子大生のお姉さんに気味悪がられてしまった。







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